1本の木が描かれた絵

おじいさんの家に、1本の木が描かれた絵が飾られていました。

「この絵を見て何かを思いますでしょうか。」

「美しい緑ね。新緑の季節を描いたのかしら。」

「きっと出会いを予感させているんだよ。」

「もしかして、この木は誰かを待っているんじゃないかな。」

「恋人?この木の下に来るのかしら。」

「いや、おそらく今別れた後なんだよ。だって少し寂しげだ。」

「寂しげというよりも、懐かしい気持ちを表現したんじゃない?思い出のような。」

「そうかなぁ。僕はみんなの意見とは違って、どこか清々しさを感じるけど。」

「自由を表現したとか。」

「…それでおじいさん、真実は何?この絵はどういう絵なの?」

「この絵は“1本の木が描かれた絵”です。

それ以上でもそれ以下でも無いのです。そういう絵なんです。」