絵画に親しむ習慣「日本人は絵を買わない」と言われる理由

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高額の絵画を売買する市場も
日本は世界に比べればごくごく小さな規模だそうです。
ですがそれは高額絵画の世界だけではなく、
一般の家庭で絵画を飾りアートを楽しむ習慣もまた、日本であまり根付いていないそう。

確かに例えば洋服はシーズンごとに何着も買うし、
高くても頑張って買う。他にもきっと、スイーツ買ったり、ゲームを買ったり、映画を見たり、
でも絵画は・・・

洋服は買うけど・・・

例えば花を買う人って服を買う人に比べると格段に少ないと思うんです。

洋服は必要なもの。花は無くても困りません。
服は無かったらお仕事行くのも困るし、友達と遊んだり、いろいろなシーンごとで必要となるものだから買います。

でも高い洋服は次々と買っても、
例えばその中の一着を500円安いものにして、その分500円のお花を買って帰ろう。
って思う人って、全体からすると少ないと思うのです。

スイーツ、ゲーム、映画なども、美味しいものが食べたいとか、架空の世界を想像して楽しみたいとか、いろんな「必要」があって買うんです。

でもお花って、誰かに送る以外に自分で楽しむ用途としてはどうなのでしょう。「自分の部屋にどうしても花が欲しいんだ!!無くちゃ困るよ」という程求める方は、かなり小数かもしれません。

個人的にはお花は好きなので、結構頻繁にお花屋さんのぞいては、少し余裕があるときは小さな花束買ってかえったりして
プチ贅沢な気分を味わったりするのですが、
興味が特に無ければ、誰もが買うものではありません。

そして絵画。

興味が無ければ無くても困らないという点は、絵画となればなおさらそうです。
お金持ちの人が楽しむものとか、
芸術のことはよくわからないし、なんていう理由もきっとあって
きっと絵画に手を出す方は多くはない。

でも海外では普通に、ごく当たり前に、おそらく有名無名にかかわらず、お家の壁には絵が飾ってあってという生活が浸透していたりする地域も多いそうです。

でも日本で、お家の壁に絵が飾られているお家って結構少ない気がします。

部屋が狭いから絵を飾る習慣が根付かない?

日本人が絵を買わない問題の話ではよく「部屋が狭いから飾る場所が無い」という点も挙げられていますが

飾りたいと思えば飾る場所くらいあるとは思うのです。
なので場所の問題よりも、「飾りたい」と思わないことがポイントになってくるのではないかなと思います。

美が生活の中にある日本の暮らし

日本って、「美」が生活の中のそこら中にちりばめられていると思うんです。

例えば、食事をする時。
器の絵柄だったり、可愛い箸置き。
食事の盛り付けも、見た目で楽しむことに重点がおかれています。

四季があるので、季節ごとの美しさを楽しむ工夫もありますよね。
雪見障子だったり、風鈴など、また昔ならばお着物の柄で美を楽しんだり。

なので特別に「絵画そのもの」を飾らなくとも、
風情ある美を味わって、気持ちに余裕を持てたのかもしれません。そういった時代背景も関係しているのかもしれませんね。

周りの人たちの習慣は

絵画を買うという習慣は、幼少期に周りの大人が自然にしていると、おそらく何の疑問もなく、自分も「絵を買おう」という気持ちを抱くのではないでしょうか。

そこまではいかなくとも、「絵を買う」という行為が頭の片隅には残っていると思います。おそらくそういった選択肢を知らずにいる方よりはずっと、絵が生活の中に身近な存在としてあるのです。

冒頭でお話した「花を買う」ということにも同じことが言えるかもしれません。
身の回りに、花を楽しんでいる大人がいて、それを見てあるとき自分も花に興味を持つ。

(それが全てではないとは思いますが)

絵画を購入して、部屋に飾り、その絵のある空間で日々を過ごす。
毎日の生活をほんの少し彩豊かにする方法のひとつに、「絵画」という選択もあるのですが、その選択肢さえ無い場合がほとんどかもしれません。

ましてやお花のように、気軽に500円~1000円程のプチ贅沢を感じるという訳にはいかない。良心的な価格で販売をなさっている作家さんがいたとしても、ワンコインという訳にはなかなかいかないでしょう。

美大生は絵を買わない

もうひとつ。美大生は絵画を買わない。という興味深い記事を読んだことがあります。
美大生は描いた作品を誰かに買ってほしいと願うのに、自分自身は絵を買ったことが無い。

確かに。と思わされました。
美大生の中で、自分で好きな絵画を購入して自宅に飾っている人は少ないのだとは思います。

でもそこで私がひとつ思うのは、美大生の場合好きな画家がいた場合、絵画を購入して飾り鑑賞するよりも「どう描いているんだ??!」とその技法の探求のほうに視点が向くのではないでしょうか。

絵画を買うのであれば、そのお金で画材を買って技法を模索する。という方向に、ベクトルが向く気がします。

有名画家の絵画、絵で成功している人たちの絵画を
自分のお金で買えるのであれば、もしかしたら購入して、鑑賞ではなく研究のために使うかもしれません。でも学生です。
きっと買いたくても買えないです。

絵を求めてくれる人

絵画を買う人が少ない理由について、書いてきましたが、
でも私が最近思うのは、「絵を求めている方は確かにいる」ということ。(投資目的ではない、もっと一般の生活に根差した形で)

確かに、ブランドの服を買うように、誰もが憧れを抱き、求めるものではないのかもしれませんが、
それでも、絵を求めてくださる方々はいらっしゃいます。

家族や友人へのプレゼントであったり、自分の部屋に飾ってくれたり、インテリアのひとつとして購入したり。そして幸栄なことに、絵を見て感動をしてくださることも、あったりします。

ウマレアトリエの作品

スイーツを食べて幸せな気持ちになる、ゲームをして楽しむ、といったことが幸せをもたらすのと似た様に、わずかであるのかもしれませんが、絵も人の気持ちに作用するんです。

現代らしい絵の流通

今は画廊などに出向かなくても、絵が買えます。
絵を買いたいと思っても、画廊に行って・・・となると
なんだか絵に詳しいわけでもないし敷居がたかくて躊躇しますよね。

今はSNSやネットでたくさんのアーティーストが絵画を公開していますし、イベントに出展している方も大勢いらっしゃいます。イベントではライブペイントをして、会場で絵を実際に描きながら販売している作家さんもいるそう。画家との距離ももっと身近に感じられて、購入しやすいのではないかと思うのです。

ネット販売で言えば、アートメーターさんというネット上で絵画の販売を行っているサイトもあります。登録されている画家は活躍されている有名な方から、駆け出しの一般の人まで様々。

ART METER

現在はthis is galleryさんという会社が運営なさっていますが、設立したのはカヤックさん。

カヤックさんのアートメーター設立の思いが素敵だと思い共感しました。
「普通の家庭に、ごく自然に、気に入った絵が飾られている」
そういう生活が浸透することを夢みて、アートメーターをはじめたそうなのです。

個人的には、アートメーターさん設立時の思いがそのまま引き継がれて、今後も浸透していったらいいなと願っています。

それでもやはり、買った絵を転売して高値で売りたいといったように、投資の目的で絵画を購入するのであれば、きちんと画商なり専門知識のある方の元で買うのがいいのだろうと思います。そうではなく、絵、アートを楽しむ、生活にゆとりを見出すための目的であるならば、全然そのようなことにこだわることはないと私は思うのです。

絵に込められた意味がデメリットに?

絵を購入する習慣が広がらないことの理由のひとつに「絵に込められた意味」が関連してるとも考えられます。

絵、芸術というと、何か社会へのメッセージが込められているイメージがあって、それを自分の部屋に飾るとなると、少し重い、という話も耳にしたことがあります。

確かに現代美術へ至るまでの間に、見た目の美しさよりも絵に込められたメッセージ性の方が重視されるようになり、社会に訴えかけるかのように斬新な作品がアートとして注目されるようになりました。

なので、視覚的に綺麗だなとか、見ていたいと思う絵よりも、訴えかけるメッセージが何であるのかが重要視されやすいのだそうです。

ですが、そういった深いメッセージがあるものだけを絵画と呼ぶわけではありません。確かに、これまでの美術の歴史の流れの中で、今評価されるべき絵画というのは、決まって来るのかもしれません。
でも、高額で売買され歴史に名を刻む絵以外は、絵画ではない。なんてもったいない。

その絵に作家らしさがあふれていて、その雰囲気が気に入って、よくわからないけど、綺麗だなとか、見ていたいな、とか思えれば十分であると思います。

そうでないとせっかく素敵な作品を制作している作家がたくさんいるのに、これは芸術ではないとか、芸術はよくわからないから好きじゃない、なんてそんな言葉でくくられてしまったら寂しい。

自分の感じる「好き」が大切

絵を買いたいと思ったとき、自分が好きなら、それでいいと思うのです。

もちろん、先程も書きましたが高値で売ってお金にする目的であるのならば、好みの絵よりも今後芸術分野で高く評価されそうな絵を買う必要があります。また美術史の流れを重視している場合には意見も異なってくるでしょう。

でも部屋にかざろうとか、誰かに贈り物にしようとするときに、
肩書や評価されているのか、メッセージは込められているのか、芸術として成り立っている作品なのか、なんてことは考えないで楽しめばいいと思います。

そうでないと、どんどん絵というものが難解な存在になっていってしまう気がします。

私が描いた絵にも、もちろん意識的にしろ無意識にしろ、なんらかの私の思いは絵に含まれているとは思いますが、
それよりも「なんとなく」でもいいので、綺麗だなとか、好きだなとか、興味を持ってもらえたら嬉しいです。

私の絵だけではなく、自分はこの作家が好き、この絵が好き、という気持ちをもっと大切にしてもらえたらと思います。

そして、たくさんの方に、好きな画家の絵を気楽に購入して季節ごとに絵を変えたり、そうやって日常をちょっとだけ楽しんでもらえたら嬉しいです。

もし原画を購入するのを躊躇してしまうのなら、ポスターやポストカードを飾って楽しんでもいいと思います。

「芸術ってよくわからない。絵画ってなんなのかな?わからないのに、好きって言っちゃダメなのかな。」と正体不明の存在のような気がして、なかなか近づけない方も多くいるのではないかと思うのです。例えば有名なゴッホ、ピカソ、モネ、ルノワールなどが描いた作品は、学校の教科書にも載っていたりして、見慣れているよく知っている絵のはずなのに、それを「私はこの絵が好きなの」なんて気軽に言っちゃいけないような雰囲気があったり。

かわいい!きれい!たのしい!落ち着く、癒される。そんな単純な気持ちをもっと大事にしてもいいのかなと思います。「なんとなく好き」が大事なんだと思います。

自由に気楽に、生活の中に自然とアートが存在するような暮らしが広がったら嬉しいです。

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